小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
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帰化人(50) 小樽こだわりのライフスタイル

常識は変な人を待っている
簑谷  修 氏
有限会社 利尻屋みのや
代表取締役
〒047-0027 小樽市堺町4-6
TEL 0134-25-4060 FAX 0134-25-4061



帰化経緯
 利尻生まれの簑谷氏は、昭和31年16歳で小樽に技術職として移住。35年の任務を経て、51歳で一念発起し、平成3年堺町に「七日食べたら鏡をごらん」というキャッチコピーで昆布専門店をオープン。以後平成11年ウイングベイ出店、平成12年大正クープ館、平成17年不老館、平成20年小樽出世前広場を次々に開店。今日では堺町はもとより小樽観光を牽引する代表の一つとして大きな役割を担われている。
「16歳の旅立ち動機は100%憧れでした。小樽と利尻は物流の縁が深く、歴史的な小樽の志ある逸話を数多く利尻で聞く機会に恵まれ、私にとって小樽は子供の時から憧れの大都会でした。歴史的な街並みとお洒落なファッション、志ある男達と美しい女性、洗練されたビジネスと目利きの肥えた買い物客、まさに夢の国でした」
 正直に包み隠さずこう語る。

「七日食べたら鏡をごらん」
 平成25年9月25日、新評論発行 川嶋康男著による『「七日食べたら鏡をごらん」ホラ吹き昆布屋の挑戦』が世に出た。簑谷氏自身は「分不相応」と何年にも亘って拒否されてきたが、22年に亘る執筆者と出版社の誠意と確信と執念に根負けされた。
 ノンフィクション作家あるいは出版社というジャーナリズムの客観的視点から、簑谷商法の画期性に注目された結果だ。簑谷氏は自ら「インチキ臭い商売」「アヤシイ雰囲気」といった表現をとるが、昆布という実に地味な商品を簑谷流の誠意で販売する商法に注目されている。是非一読されんことを望みたい。

is this Otaru?
 ギタリストPat MethenyやピアニストKeith Jarrettが「is this America?」というJAZZナンバーを弾いている。「これがアメリカですか?」という意味だが詞はない。夢と希望を抱いて多様な人種が移民し、アメリカン・ドリームといわれるように、成功者に拍手を国民的規模で送り応援する「良きアメリカ」を知る者が、今日のアメリカの姑息さを嘆く哀愁と愛情漂う曲である。
 簑谷氏は時々物憂う表情をされる。「自分の大好きだった小樽はどこへいってしまったのだろう」まさに「is this Otaru?」への哀愁と愛情漂う仕草である。
 明治2年から昭和元年までの約60年間に北海道への移民記録が227万人。先住のアイヌ以外は全てこの記録に含まれる。これら移民が船で北海道に渡り一歩を踏み出したのは主に函館と小樽。だから両港はまさに文化の違う全国各地から訪れた他民族国家ならぬ多民俗地域であった。いわば日本の中のアメリカといえる。
 だからネガティブ志向よりポジティブ志向でなければ這い上がれない土壌であり、アメリカ同様に無神経な陽気さこそが必要とされた。こういう土壌で成功を収めた「若き獅子たち」というテーマで簑谷氏は『小樽歴史館』を開設されている。まさに簑谷史観でいう「this is Otaru!(これぞ小樽)」である。

変な人
 ちなみにネガティブ志向での変な人はストーカーにはじまり、コミュニケーションがとれないとか、人の迷惑を顧みないなどをいうが、この場合、ポジティブ志向での変な人を指す。たとえば誰も考えもしないことをしでかすことをいい、「新しい表現者」といっても差し支えない。一方、「変な人」の対語は「普通の人」。ならば「普通の人」の定義を述べられる方はいるだろうか。いるはずがない。普通は常識と同義だが、常識は時代・地域・場合によって異なり諸行無常だからだ。ならば常識なる亡霊が形成される過程には、「変な人」が「変な事」を積み重ねるうちに、いつしか認知され、あるいはブレイクして社会に溶け込む事実が確認できる。ガリレオ、エジソンしかりである。いってみれば「常識は変な人待ち」、あるいは「常識は変な事の集合体」なのだ。
 かつての小樽はそんな変な人でなければ名を上げられない土壌であったし、今日の小樽における変な人代名詞のような簑谷氏ばかりであったと思われる。まるで隔世遺伝のように、簑谷氏の生き様は小樽の潜在性を引き出すモデルとなっている。