一般国道5号(6) 地方主権的総括
インフラの代表格として、小樽を横断する一般国道5号について5回に亘って記してきたが、その目的は地方にできる分野があるかないかを探ると同時に、インフラへの感謝を地方に醸造したいがためである。
総合的管理
国道を建設したり総合的に管理する機能は、基本的に国であるべきだ。国道と称される以前は街道といわれていたが、その時代には自動車が存在していない。人馬を通す道であったから、地方ごとに、あるいは隣り合う地方間で馬車道が開削されていれば事足りた。しかし近代以後道路利用者の主役は自動車となったことから、地方によって交通ルールがバラバラであっては大変なことになる。いわゆる連続性こそが安全の基本ルールといえる。自動車が国民の足として普遍的になっている以上、国道の総合的管理は全国を俯瞰する立場にある国が担うにこしたことはない。
かりに地方が管理する場合、北海道、本州、四国、九州、あるいは島々ごとに道路管理課の担当者が必要な度に一カ所に集ってルールの改正などを議論するのは難儀であるし、合理的とはいえない。
点検
国道というインフラは空気のようにあって当たり前だが、なければ大きな不便を強いられる。この一点で国道の重要性は計り知れない。とすれば万が一どこかに不備が生じれば大惨事にもなりかねないシロモノである。したがって点検は怠れない任務だ。
この作業は路面であれば地割れ、沈下、陥没、崖崩れ、トンネルや橋であれば様々な角度からの強度具合、さらには標識や安全地帯や白線など細かな点検項目がある。これらは現在、一定の点検マニュアルに沿って北海道開発局が外部に委託して管理をしている。ここに地方自治体にも可能な領域が見いだせる。
点検マニュアルは全国一律なものと地方ごとに異なる現場特性があるからだ。地層や気候、そして利用頻度、利用する人々の気質も含め、決して一定ではない。したがって耐用年数にも差がついてくる。
これらを道道や市道とともに地方自治体が管理する可能性は十分あるし、無論財源委譲も含めて考えていく時代でもあるだろう。
世論
これまでのインフラ整備における世論は、その条件を満たしているとは限らない。たとえば国道が四車線化され、一般市民はそこを走行して初めて「えっいつこうなったの」と気づき、「便利になった」と実感するから文句も出ないで、問題なく時間が経ってきたケースが多い。しかし地方にとって数々のインフラの必要性があって、それらを総合的に把握し、優先順位などが議論されるような過程を地方の立場で行われたこともない。
世論とはどうあればいいのか。要請や要望が国家官僚や国会議員に届けられることから始まるとしても、地方の公共事業を請け負う業界発であり、先に掲げたように、地方の総合的判断ではない。
なぜなら地方の総合的判断を下す議論も組織も存在しないからだ。全ての公共事業システムが縦構造であるように、世論もまた縦構造になっている。だから一般市民はそんな要請が頂上へ届けられていることも知らない。インフラは地方にとって大事なものであるのにだ。
結論は、地方の総合的判断装置の欠如という問題提起である。
今後もこの問題意識を他のインフラを取材することによって揉んでいきたいと思う。