小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
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COLUMN

小樽FRESH
編集人 石井 伸和


ブランディングとマーケティング
 小樽へ行ったことのない方(ビジター)が行ってみたいと思う動機にはFantasy(幻想的)、REtro(遡る)、Slow(ゆっくり)、History(歴史)があるといわれる。これらの頭文字を並べると偶然FRESH(新鮮)ができあがる。
 この動機を育んだのは小樽自身である。歴史的建造物の街並みや歴史的建造物を再利用した空間がFantasy、REtro、Slowという印象を放ち、その絡繰りはHistoryを大切にすることにあるという小樽のまちづくり思想の具現化手法だからだ。いわば小樽が自らに持つ財産とその活かし方というブランディングがそっくりそのまま他者から見てマーケティングに転化したことになる。簡単にいえば、小樽がこうありたいと望んで進んできたことを観光客も歓迎し求めて来てくれているということになる。
 自らの潜在性を活かそうとするブランディングはともすれば他者のニーズに沿おうとするマーケティングにより自らを失うこともままあるにも関わらず、ブランディング志向がそのままビジターの動機になっていることは奇遇であり幸甚というほかない。
 さらなる進化へ
 であるならFRESH動機をさらに高めることが、より小樽らしくよりニーズに沿うことになる。平たく言えば小樽自身が育んだビジター動機を裏切ることなくより高めることを講じればいい。それが小樽にとっても観光客にとっても良く、くわえて小樽の街並みが整備され、交流人口が増え、経済的自立にも大きく貢献するという「三方よし」の極意ともいえる。

Fantasy
 いわずもがなFantasy動機をかき立てた直接の原因は1995年制作岩井俊二監督の「ラブレター」、2004年制作の篠原哲雄監督の「天国の本屋」などであることは紛れもない。小樽をロケ地とした実に幻想的な映像だからだ。小樽にはこんな病院、こんな図書館、こんな本屋、そしてこんな建物や街並みがあるんだという幻想的な印象を放ってくれた。無論いずれの内容もまたファンタジーである。

REtro
 餅屋10軒、市場9棟、喫茶店60軒という昔ながらの店舗、人力車、SL、屋形船、ボンネットバスという昔ながらの交通機関、さらには数百軒もの歴史的建造物再利用店舗、あるいは100軒近くの民家の石蔵、そして1,000棟を超す歴史的建造物の存在が映像や紙媒体で放たれていることがREtro感を醸造している。

Slow
 Fantasy感やREtro感を発信する現象はそれ自体、時間がゆっくりと流れるSlow感を各人の右脳に呼び起こす。高度経済成長の煽りで古いものを捨て去ってきた反省を持つ全国の意識の中にものを大事にする「もったいない」意識が芽生え、くわえて成熟化の時代に経済優先への反省もSlowLifeへの憧憬に転化されてきた。自然と共生するSlowLifeと同時に街並みと共生するSlowLifeあるいはLife Styleへの希求に小樽が取り上げられてきた。

History
 Slowが右脳ならHistoryは左脳である。何故なら石蔵は、何故なら銀行は、なぜなら番屋はなどを説明する歴史的事実は、過去の人々の意思や意図が重みを持ち、今日に継承されている目に見えない物語が脈づいている。

付加価値
 これらの視点を分析し新たな小樽モデルを生み出すことはFRESHなまちづくりに付加価値をつけることになる。たとえば歴史的建造物を観光施設として再利用する以外に宿泊施設とする方法、あるいは個人のライフスタイルの実現にFRESHを組み合わせる方法も考えられる。いずれも宿泊観光・人間観光といった多様な観光にもつながる。小樽にしかない小樽発のビジネスモデルをつくる土壌はできている。