小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
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地産(31) 後志でなにが生産されているの

梅漬け
梅漬屋
代表 幡野 徳重 氏



水で洗う
水で洗う
梅漬けは母の味
 そもそも幡野さんの梅漬けは、今は亡き母親が手掛けたもの。当時、母親が余市町農協女性部に所属していた時、冬の女性部の活動として漬物の製造販売を開始した。この時、幡野さんの実家には大きな石蔵があったため、同時にそこで梅漬け作りが始まったという。
 母親の梅漬けは、余市町の梅とシソの葉を使い、添加物なしのシンプルな製造方法。しかも8%の低塩。酸味もほどよくあり、飽きない味。この味が幡野さんの梅漬けの原点となった。

塩漬けにする
塩漬けにする
梅漬け…二代目の挑戦
 今から10年程前、母親は高齢のため女性部の第一線を退き、この時点で農協女性部の梅漬け作りも終了となった。しかし梅漬けの味を懐かしむ方から、何とかもう一度作れないかという要望があり、幡野さん夫婦が試験的に取り組むことになった。母親から伝授された通り作ったところ、20s2樽が何とかできた。早速、友人、知人に試食してもらいながら試行錯誤を繰り返していった。

小さなかめで漬ける
小さなかめで漬ける
塩分8%の壁
 一般に市販されている梅干しは塩分が20%前後あり、うす塩・減塩・低塩などと表示されている梅干しでも塩分は15%前後といわれている。しかし、幡野さんが母親から受け継いだ梅漬けは塩分8%。もちろん低塩で健康に良いが、漬けるにはかなりの手間がかかる。つまり、いかにカビなどの雑菌を発生させないで作るかということ。最初の頃は、この失敗ですべて廃棄処分した苦い経験がある。
 母親はなぜ、同じ8%で上手に漬けることが出来たのか。ヒントは実家の石蔵にあった。
 石蔵は1年中、室温の寒暖の差が少ない。これがカビの発生を抑えた要因と考えた。そこで、漬ける容器をポリ容器から、陶器の瓶に換えてみた。予想通り、今度はうまくいった。また、もう一つの失敗の原因として考えられるのは、梅そのものにあった。少しでも傷んだ梅が混ざっていると、低塩仕込みではカビが発生した。そのため良い梅のみを仕入れ、更に仕入れてからも選別を徹底することで解決した。また梅の芯を丁寧に取り除くことも重要なポイントだった。これもカビの発生原因だった。
 失敗の原因究明と、その対策が確立するまでに約5年を要した。低塩仕込みの難しさが分かる。

かめで熟成させる
かめで熟成させる
二人三脚
 幡野さんの梅漬け作りは、奥様と二人ですべてをこなす。5月、自宅前の畑を耕し、ハウスでシソの種まき。6月、ハウスで育ったシソの苗を畑に定植していく。7月下旬~8月上旬、余市産の梅が入荷。水洗いとアク抜き作業のあと、ザルにあげて水を切る。これからが大仕事。梅の芯を一つひとつ手作業で取り除く。幡野さんが仕入れる梅は大粒の「豊後梅」。一粒20~30g。これを1,200s分処理しなければならない。気の遠くなる作業だが、完熟梅のため、のんびり作業していたのでは梅の状態が変わっていく。その後、塩漬けにして梅酢が上がってくるのを待つ。
 一方、畑では8月のお盆前後、シソが収穫時期を迎える。シソは朝5時頃から刈取りを始める。水分を吸い上げる朝の方が萎れないからだ。刈り取ったシソの葉は1枚1枚柔らかい部分を摘み、堅い部分は捨てる。水洗い、水切り、乾燥後、塩で揉みアクを絞り出す。濃い色をしたシソ汁が出るので、汁は捨てる。これらの作業の後、やっと本漬けに入る。
幡野さんが用意した瓶は約200個。これに一つひとつ丁寧に入れ、2ヶ月間は寝かせ、10月中旬に出荷できるようになる。

懐かしい味、安心・安全
 幡野さんの梅漬けはおもにインターネットで販売されている。遠くは九州からも注文がくるという。本州では「梅干し」が主流。「梅漬け」は珍しく、新たなファンが増えている。お客様の評価は、「低塩なので健康に良い、添加物を使っていないので安心・安全、梅の味がする」など、手づくりの味が評価されている。
 幡野さんは言う。「塩分が高ければ、どんなに仕込みが楽かと思うが、母の味である8%の塩分は自分のこだわり。これを守っていきたい。」
 梅はクエン酸による疲労回復効果があるばかりでなく、疲れにくく健康な体を作ってくれる。戦国時代には兵糧として、合戦におもむく兵士たちは、にぎり飯に梅干を入れ、腰につけて歩いたといわれている。これからの季節、1日1粒は食べたい。


梅漬屋
〒046-0003 北海道余市郡余市町黒川町1146
TEL&FAX (0135)23-4967
E-mail:info@umezukeya.com
URL:http://www.umezukeya.com
*梅漬け 1パック420g…1,000円(送料別途)
*梅漬けは小樽市JR小樽駅構内「タルシェ」、札幌市オーロラタウン「きたキッチン」で販売しています。またホームページで購入することもできます。