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観光学(49) 観光を読む

LCCと統合型リゾート
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



ライオン航空
 3月中旬にインドネシアのLCC(格安航空会社)ライオン航空がエアバス社の最新鋭航空機234機を一括発注したことが大きな話題になった。発注額は約184億ユーロ(約2兆3千億円)で、エアバス社にとっては民間機としては過去最大の受注になり、それによって今後10年間にフランス国内で5,000人の雇用が生みだされると言われている。まさにインドネシアが低迷する欧州経済に活を入れるかたちになる。
 ライオン航空は2000年に初就航したLCCであるが、すでに2008年に利用者数で国営ガルーダ・インドネシア航空を抜いて、インドネシアで首位の航空会社に成長している。ライオン航空は2012年に3,000万人程度であった輸送能力を2013年には4,000万に引き上げることを計画している。そのためにライオン航空はエアバス社のライバルである米国のボーイング社に対してもB737を230機も一括発注しており、総額220億ドル(約2兆円)でボーイング社にとっても一括受注としては最大規模となっている。
 インドネシアは人口2億4千万人の大国であり、国土の東西距離が約5,000キロで米国並みである。経済成長が順調に続いているために航空市場が拡大しており、2011年に6,600万人だった旅客数が2015年には1億人を超えると予測されている。ライオン航空による積極的な先行投資はそのような将来展望を踏まえている。
 アジアにおけるLCCのライバルであるマレーシアのエアアジア社も最新鋭のエアバス機を大量に一括発注するとともに、すでに2012年に経営の執務拠点をジャカルタに移しており、インドネシアを拠点とするASEAN域内の航空ネットワークの拡充を急いでいる。そのような動きの延長線上には、当然のことながら、日本があるので、今後、日本と東南アジアの諸都市を結ぶ数多くのLCC路線が開設される可能性が高い。

フィリピンのカジノ
 東南アジアでは統合型リゾート(巨大ホテル、会議場、ショッピング施設、アトラクション施設、多彩なレストラン、カジノ)が大成功を収めている。統合型リゾートに進化したマカオはいまや米国のラスベガスを上回る規模の340億ドル(約3兆円)を稼ぎ出している。同様にシンガポールの場合にも、統合型リゾートがフル稼働しており、昨年のインバウンドは1,320万人に達しており、観光収入も統合型リゾート開業以前の2009年は126億Sドル(約8,200億円)が昨年は222億Sドル(約1兆4,400億円)に増加している。まさに統合型リゾートが大いに威力を発揮している。
 観光立国を目指すフィリピンにおいても統合型リゾートがついにオープンした。3月にマニラ首都圏のカジノリゾート「ソレア・リゾート&カジノ」がオープンし、開業記念式典の祝辞でアキノ大統領は「世界クラスのデスティネーションが誕生した。これによって2016年までにインバウンド1,000万人達成という目標に弾みがつく」と述べた。フィリピンは「マニラベイ・エンターテインメントシティ」という国家プロジェクトを推進しており、ソレアを含めて3つの巨大な統合型リゾートを建設中である。まさにASEAN諸国がアジアの未来を拓く時代が到来している。さて、日本の観光立国に未来はあるだろうか?