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観光学(43) 観光を読む

縄文文化を現代に活かす
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



北海道の縄文文化
 9月中旬に札幌で縄文遺跡に関する国際シンポジウムが開催された。北海道と北東北3県(青森県、秋田県、岩手県)は互いに連携して、「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」の世界遺産登録を目指して活動している。今回の国際シンポジウムは世界遺産を審査・認定するユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関である国際記念物遺跡会議のメンバーが参加して開催された。シンポジウムでは「十分に世界遺産登録の価値がある」「日本は遺産管理の仕組みについて世界に手本を示してほしい」「遺跡に対する地元住民の意識が『我々の遺跡』へと変われば、保全活動にも積極的に関わってくれる」などの意見が出された。
 日本では、今から約1万5千年前から2千3百年前まで縄文文化が展開した。九州では2千3百年前(もしくは3千年前)頃に水稲耕作を伴う弥生文化が始まり、やがて本州に広がっていった。ところが北海道では稲作が取り入れられなかったために約1万年以上にわたって縄文文化が重要な役割を果たした。縄文人は自然環境と調和しながら、自然の恵みを活かした暮らしを営んできた。自然と共生する持続可能なライフスタイルが1万年以上にわたって世代から世代へと引き継がれてきたのであり、十分に世界遺産に値する普遍的な価値がある。


縄文太鼓の演奏家
 北の縄文遺跡群を世界遺産として登録する動きも重要であるが、それとともに縄文文化の伝統を現代に活かす動きも重要である。
 今回取り上げるのは、縄文太鼓演奏家として活躍している茂呂剛伸さんである。茂呂さんは現在34歳、7歳で鼓章流どさんこ太鼓に入門、20歳で西アフリカ発祥のジャンベ太鼓を始め、22歳の時に西アフリカのガーナ共和国に移住してジャンベ太鼓を修行。その後、31歳で原子 修氏(詩人・札幌大学名誉教授)と出会って縄文文化に目覚める。江別市で出土された縄文土器の複製にエゾシカの皮を張って太鼓を創って「縄文太鼓」と名付け、演奏活動を開始。自ら制作した縄文太鼓を用いて、西アフリカのジャンベ太鼓の技法を駆使しながら、独自の演奏スタイルを確立し、「手鼓・太伸世流・初代宗家」を名のって、さまざまな活動を行っている。
 茂呂さんは、小学校に出向いて、縄文土器の製作、エゾシカの皮張りを指導して、生徒たちに小型の縄文太鼓を作ってもらい、併せて縄文太鼓の演奏も指導している。その背景には、縄文太鼓を活用した「音楽療法」がある。茂呂さんには全盲の兄がおり、その兄は茂呂さんの影響でパーカッショニストを目指している。茂呂さんは兄と一緒に心療内科のデイケアや地域活動支援センターでの演奏活動も積極的に行っており、縄文太鼓を活用した「音楽療法」の面でも重要な貢献を行っている。
 茂呂さんは、ベルリン在住の福田 一氏(ピアニスト・作曲家)とのコラボレーションによるコンサートを今年11月21日にコンサートホールKITARAで開催することを予定している。縄文太鼓とピアノのコラボという素晴らしいコンサートが楽しみである。
 東日本大震災と原発事故をきっかけにして、日本人のライフスタイルのあり方を見直す機運が高まっており、そういう中で縄文文化が注目されている。縄文遺跡を世界遺産に登録する動きも重要だが、縄文文化を現代に活かそうとする茂呂さんの活動も非常に重要である。