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観光学(38) 観光を読む

文化輸出産業としての観光
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



貿易赤字の拡大
 財務省は2011年度の貿易赤字が4兆4,101億円になり、過去最大の赤字額になったことを今年4月に発表した。これまでは第二次石油危機に見舞われた1979年度の3兆1,278億円が最大赤字だった。2010年度は5兆3,321億円の貿易黒字だったので、この1年で貿易収支に大きな変化が生じたわけだ。
 2011年度は輸出の面で自動車や電子部品などが大幅に減り、輸入の面で原子力発電所の停止に伴う液化天然ガス(LNG)など火力発電燃料の輸入が急増したことによって過去最大の貿易赤字が生じた。電力需要がピークを迎える夏までに原発再稼働が進んでいなければ、火力発電の比重がさらに増し、燃料輸入の増加が避けられないために2012年度は貿易赤字が大幅に膨らむ可能性がある。だからこそ、日本はもっと真剣に自然再生エネルギーの活用を図って、年間に20兆円を超えるといわれる燃料輸入を抑える必要がある。

工業立国と輸出立国
 日本が世界に冠たる経済大国を実現できたのは、1960年代以降、自動車産業と家電産業を両輪にして工業立国と輸出立国を成功させたからである。されど90年代初頭にバブル経済が破綻するとともに、グローバル経済が大きく進展する中で日本経済の停滞が継続されている。20世紀に日本経済を牽引した自動車産業と家電産業は共にあえいでおり、もはやかつての成功体験としての工業立国と輸出立国に濃い陰りが生じていることは事実である。
 日本はいま大きな岐路に立っている。一つはあくまでも経済成長を重視して各種の成長戦略を講じて工業立国と輸出立国で頑張り続ける道であり、もう一つは経済成長至上主義ではなく、暮らしの豊かさに力点を置いて成熟戦略を推進する道である。

文化輸出産業
 幸い、日本は「観光資源・魅力の宝島」であり、多様な資源を持続可能なかたちでより有効に活用することによって「観光創造立国を進める道」もあり得る。実は観光は「文化輸出産業」であり、自動車や家電製品と同様に日本経済の発展に貢献できる分野である。
 自動車産業と家電産業は日本における経済発展の原動力になったが、巨額の資金、優秀な専門的人材、巨大な資源とエネルギーを必要としている。ところが、21世紀型産業の必須の条件は「省資源・省エネルギー」であり、自動車産業と家電産業はその条件に合致しない。それに対して、観光産業はまさに省資源・省エネルギー型産業の典型であり、21世紀型産業の要件を満たしている。
 その上に観光は文化輸出産業として外貨の獲得に貢献できる産業でもある。今後、数多くの外国人が日本を訪れる可能性が高いが、訪日観光客は各地を訪れて貴重な外貨をもたらしてくれる。そういう意味で、観光産業は自動車産業と家電産業と同様に「輸出産業」としての役割を果たせるのであり、しかも「省資源・省エネルギー」という21世紀型産業としての役割も果たし得る。
 今後、日本はかつての「成長路線」から「成熟路線」へ切り替えていく必要があるが、その際に「文化輸出産業としての観光」に対する期待がより高まっていくはずである。