小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
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帰化人(31) 小樽こだわりのライフスタイル

古きをおしやらず軒先へ
稲葉 圭計 氏
PRESS CAFE'オーナー

PRESS CAFE'
〒047-0031 小樽市色内3-3-21 旧渋澤倉庫内
TEL&FAX 0134-24-8028
http://www.presscafe.biz/
presscafe@palette.plala.or.jp



経歴
 昭和31年9月9日、日高門別厚賀生まれの稲葉圭計氏は営林局勤務の父の転勤により、瀬棚〜館〜倶知安〜岩内に移り、岩内高校を卒業後札幌の北海学園大学に進学。昭和55年に卒業後、三井グループの北炭農林に1年、翌56年に札幌の紳士服販売KENTに1年、翌57年に建築内装の会社に昭和61年まで勤務、その後、ススキノで多角的に店を出していた知人に乞われ企画任務に就く。平成元年に自らPRESS CAFE'を札幌月寒西に開店し、趣味のクラシックカーを3台、店内のディスプレーに使用。中古車販売や修理も手がけPRESS CAFE'が仲間の溜まり場になっていく。

転機
 クラシックカーの仲間らと小樽へは何度かツーリングに出かけた。この頃の小樽はまだ人口18万人をキープし、若者も大勢いた時代で、「レトロでオシャレで個性的な若者がいて流されていない魅力的な街」という印象を持つ。
 平成17年にPRESS CAFE'の大家が失踪し、わずかな立ち退き料で閉店することになり、稲葉氏は1年間放浪生活を余儀なくされる。しかし「これもまたいい」とプラス志向で過ごすと、「今まで見えていなかったものも見えてきましたね」と運命を楽しむおおらかさが芽生えていく。

帰化
 偶然か必然か、人の運命を決める出来事は集中的におきるものらしい。なにげなく買っていた宝くじで100万円が転がり込んでくる。そろそろなにかしようかと思っていた時である。さらに小樽でダイビングショップを経営している知人から、「小樽で店を出さないか」という連絡が来るのだ。小樽には好印象を持っていた稲葉氏は早速現場に視察に出向くと、「こんな素敵なロケーションと空間で店ができるなら」と感動したのが北運河にある旧渋澤倉庫だった。
 平成18年6月に新たにPRESS CAFE'をオープン。平成19年には大家が変わる(21号サウンドクルー参照)が、条件は変わらずに営業を継続している。

アウエイ観
 営業成績は少しずつ右肩上がりで推移してきたが、オープン当所は「あれ?!こんな素晴らしいロケーションなのに、なぜ誰もこのへんを歩かないのだろう?」とそんな驚きを持ったという。稲葉氏にとっては「偶然にしてはあまりにも自分が求めていたロケーション」だったからその驚きは当然だった。「本当は小樽の人々に来ていただきたいのですが、私のとった方法は逆に札幌の知人を通して多くの人々に宣伝をかけるということでした。すると次第に札幌からも来る店ということで、小樽の人々が来てくれるようになったのです」と手の内を漏らしてくれる。少し離れた立場に身を置き客観的な誘導策をとるというアウエイ観が功を奏した。事実最初の2年間は札幌客が7割だったが、その後は逆転して小樽の方が7割になっているという。

印象
「僕は古い建物を新たな方法で再活用していますが、小樽には多くの歴史的な建物が多いけど、古いまま、たとえば物置とか離れとかで使っているのが多く目につきますね。なぜもっとメインで使用しないのか不思議ですし、非常にもったいないと感じます」
「こういう待ちの商売をしていると、今日はお客様が来てくれるだろうかという不安を毎朝持ちます。その日、最初に来てくれたお客様には両手で握手したくなるような感謝でいっぱいになるんです。また僕は厨房にいますので、満席になった店の状態を横目で見ると涙がでてきますね」
「水商売ですから軌道に乗るなんていう現象は誤解でしか過ぎません。ある日パッタリ誰も来なくなることだって全然不思議じゃない」

ライフスタイル
 稲葉氏は間違いなく小樽で暮らすライフスタイルを提案してくれている。外から来られた帰化人だからこそ、小樽の魅力が明確に見えている。本号「文化素材」にもあるように、北運河は小樽の聖地ともいえる様々な潜在的魅力が秘められている。PRESS CAFE'やGOLD STONEという鍬入れ役を小樽は活かせるだろうか。
 そして、稲葉氏が指摘するように、小樽人は「古いものをまるで恥ずかしがるように奥に押しやる」がそれを実に「もったいない」という価値観は貴重だ。まして小樽への観光客はその「古さ」を求めて訪れ、その「古さが活かされている」ことに驚くのだ。
 小樽人にとってみれば「こんなもんがいいってかい?」と驚くより、「いいからこうして使っている」と驚かせる方が楽しい。