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観光学(35) 観光を読む

岐路に立つ日本の進むべき道
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



自動車産業と家電産業
 今年1月にデトロイトで北米モーターショーが開催され、韓国ヒュンダイ自動車の「エラントラ」が今年の北米カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。かつて日本車はこの賞の常連であったが、ヒュンダイ車が初登場で栄冠を勝ち取った2009年以降、日本車は受賞から遠ざかっている。ヒュンダイ車はデザインの良さと手頃な価格に加えて、破格の十年保証で米国の消費者の心をつかんでいるようだ。
 同様に、電化製品の分野でも日本メーカーはかつて世界を席巻したが、いまは韓国メーカーの後塵を拝している。とくに家電の王様といわれたテレビ事業では世界ナンバーワンのサムスン電子に大きくリードされている。
 日本は1960年代以降、自動車産業と家電産業を両輪にして工業立国と輸出立国を推進し、見事に世界第二位の経済大国を実現した。80年代には「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ともてはやされ、有頂天になってはしゃいでバブル経済を沸き立たせた。されど90年代初頭にバブル経済が破綻するとともに、グローバル経済が大きく進展する中で日本経済の停滞が継続され、「空白の20年」が継続されている。

成長社会と成熟社会
 日本はいま大きな岐路に立っている。今後進むべき道の一つは、従来型の経済成長路線を踏襲して、アジアを中心とした発展のパワーを取り込んで、製造業を中心にして成長戦略を推進することである。要するに、あくまでもGNP(国民総生産)に象徴される成長社会にこだわり続ける道を歩もうとする方向性だ。それに対して、もう一つの道は、経済成長至上主義ではなく、暮らしの豊かさに力点を置いて、成熟戦略を推進することである。
 昨年11月にブータン国王ご夫妻が来日され、日本でも一挙にGNH(国民総幸福)が話題になった。ブータン王国では経済成長による物質的繁栄よりも、家族の紐帯、地域の連帯、伝統文化の継承などによる国民の幸福を重視して国づくり・地域づくりが行われている。
 経済評論家の内橋克人氏は「FEC自給圏」の推進を提唱している。Fとはfood(食糧)、Eとはenergy(エネルギー)、Cはcare(介護)をそれぞれ意味しており、今後の日本は各地域で食糧とエネルギーと介護を自給自足させていくことの大切さが提唱されている。その結果、今後の日本では食糧とエネルギーと介護にかかわる地域産業が成熟戦略のカギを握る可能性がある。
 私は「FEC自給圏」にT(ツーリズム)を加えるべきことを提唱したい。食糧とエネルギーと介護を自給自足しながら、各地域の貴重な諸資源を持続可能なかたちで活用することで、外部の観光者を気持ちよく受け入れ、ホストとゲストが歓交(歓び交わる)によって、暮らしの豊かさを生みだすと共に、地域経済の活性化を図ることが大切になる。「FEC自給圏+T」によって内需拡大を図りながら、成熟社会の実現を図り、日本人のライフスタイルの革新が生じることを期待したい。