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観光学(34) 観光を読む

幻想としての観光立国
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



観光立国とは
 政府は2003年に日本国家として初めて「観光立国宣言」を行い、国土交通大臣を「観光立国担当大臣」に任命し、ビジット・ジャパン・キャンペーン(2010年にインバウンド1千万人)に着手した。2007年に「観光立国推進基本法」を施行し、2008年に「観光庁」を新設して観光立国を本格化させた。
ところが2009年の民主党への政権交代後に観光立国政策はダッチロールを繰り返すことになり、観光立国の低迷・停滞が著しくなった。昨年3月には東日本大震災が発生し、それに伴う福島原発事故・放射能汚染問題の影響で日本観光は停滞・低迷の度合いを深めている。
 観光立国とは「観光で国を成り立たせる」ことであり、それを実現するためには潤沢な国家予算を投入し、優秀な人財に活躍の機会を与えなければならない。現に観光関連産業は年間に約48兆円の生産波及効果を生みだしており、それによって約4兆円もの巨額の税収(国税・地方税)をもたらしている。「観光立国」という国家政策はグローバルトレンドに適合した正しい選択である。

観光立国の現実
 ところが観光庁の今年度予算はたった101億円に過ぎない。航空自衛隊のジェット戦闘機1機分(約120億円)にも満たないほどの少ない予算しか投入されていないのが現実だ。アジアで観光大競争時代が始まっており、この程度の予算ではとても太刀打ちできない。
 国内観光の停滞・低迷はもっと深刻だ。国内観光の活発化には地域主導による観光イノベーションが不可欠である。農業分野では公的資金で各都道府県に地域農業改良普及センターが設置され、普及指導員が活躍している。また商工業分野では各地の商工会議所や商工会によって経営指導員が公的補助金で雇用され、中小企業の経営改善や創業支援を行っている。ところが残念ながら、国家による「地域観光創造普及支援事業」は全く着手されておらず、「観光創造士」というような公的資格制度も実施されていない。
 潤沢な国家予算が投入されず、優秀な人財に活躍の場が与えられていないので、国内観光が停滞・低迷するのは至極当然だ。「口先だけの観光立国」を続ける限り、日本観光の劣化に歯止めがかからない。「幻想としての観光立国」という現実的認識のもとで、民産官学の協働によって日本観光の再生を図らないと取り返しのつかない事態に至るだろう。
 もはや愚痴を重ねても仕方がないので、幻想としての観光立国を打破して、地域観光の振興を図るために各省庁のさまざまな地域活性化予算を積極的に活用することが必要不可欠だ。社会資本整備総合交付金2兆2千億円、農商工等連携促進事業3百30億円、6次産業創出事業130億円、中小企業地域資源活用促進事業120億円など、各地域の賢者が叡智を結集して各省庁の予算を地域観光の振興のために活用することによって観光立国を前進させる必要がある。