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観光学(27) 観光を読む

飯舘村に学ぶ「までいの力」
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



「までい」とはなにか
 東日本大震災は甚大なる被害と悲劇を生みだしたが、福島第一原発事故による放射能汚染被害はいまだに継続している。とくに計画的避難区域に指定された地域に住む人々は今後も不自由な避難生活を余儀なくされる。
 全村が計画的避難区域の指定を受けた福島県飯館村は阿武隈山系北部の高原に位置する村で、人口は約六千百人。豊かな自然に恵まれた村で、昨年10月には「日本でもっとも美しい村」連合への加盟を果たしている。
 私自身は東日本大震災が生じて、ニュースで連日のように飯館村のことが取り上げられるまで、その存在を全く知らなかった。幸い、飯館村のことを紹介した『までいの力:福島県飯館村にみる一人一人がしあわせになる力』という本(シーズ出版、2011年4月発行)を読んでから一挙に飯館村ファンになった。
飯館村では菅野典雄村長の優れたリーダーシップのもとで「質の高い暮らし」にこだわった村づくりが進められてきた。1995年に策定された村の第四次総合計画「クオリティライフいいたて」によって質の高い暮らしを村全体で目指す土台づくりが推進された。第五次総合計画では「スローライフ」にこだわった構想が検討されたが、一人の村民が「スローライフって『までい』ってごどなんじゃねーべか?」と指摘したことから、「までい」が中心理念に据えられた。
「までい」とは、「真手」という古語が語源で、左右揃った手、両手の意味。それが転じて、「手間暇惜しまず」「丁寧に心をこめて」「つつましく」という意味で、東北地方で使われる方言。

までいの力
「までいライフ」を提唱している菅野典雄村長は、つぎのように語っている。「戦後一貫して大量生産、大量消費、大量廃棄によって作られてきた日本経済のスピードを少しゆるめてみよう。走っている人は歩く、歩いている人は立ち止まる、立ち止まっている人はしゃがんでみる。そうすると足元の花の美しさが見えてくる」
「戦後一貫して効率一辺倒、スピーディーにお金が全てという価値観で発展してきた結果、人と人との関係が希薄になり、『自分さえ良ければ病』になってしまった。お互い様の『までいの心』が必ずや新しい日本を再生する基礎になる」と語っている。
 飯館村では、「無縁社会×までい=有縁社会」ということで、互いに声を掛け合い、村中が縁だらけ。また「限界集落×までい=元気集落」ということで、互いに身体を動かして大地を耕し、土の声を聞くと元気が湧き出る。さらに「何もない里山×までい=資源の山」ということで、人をつなぐ、未来をつなぐ、目に見えないものをつなぐことによって、さまざまな資源が生かされる。
 全村が計画的避難区域の指定を受けた飯館村が「までいの力」で再生される日の近いことを心から願っている。