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観光学(54) 観光を読む

夏のロックフェスティバル
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



夏の恒例のトラブル
 私は1945年生まれなので、終戦記念日を迎えるたびに戦後間もない頃の日本を思い出す。私の2歳頃のセピア色の写真を見ると、背景には松葉杖をついた傷痍軍人の姿が写っている。神戸の私の家の近くに須磨離宮があり、進駐軍によって接収されて射撃場として使われていた。小学校1年の時、学校から帰宅途中に米兵に昼食を届ける進駐軍のトラックが2台来て、走り去りながらパンやお菓子を放り投げてくれたことを鮮明に思い出す。
 終戦から68年が経って、日本は見違えるほど立派な経済大国として発展した。ところが8月15日を迎えるたびに、日中・日韓関係がいまだに過去の戦争を引きずって紛糾し続けることに暗澹たる思いを禁じ得ない。

ロックフェスティバルの季節
 夏は野外での音楽フェスティバル(以下、フェス)の季節だ。野外で大規模に会場を設営して大音量を用いるために住宅地から離れた郊外のスキー場や埋立地などが使われる。世界的には1950年代からジャズフェスやフォークフェスが開催され、60年代後半からロックフェス(ウッドストックやモントレーなど)、80年代にはハードロック・へヴィメタルの盛り上がりでモンスターズ・オブ・ロック、90年代初頭にはオルタナティブ・ロックの隆盛で野外ロックフェス(英国のグラストンベリーなど)が盛況になった。
 日本ではフォークソングの野外ライブ、歌謡歌手の野外コンサート、70年代の日比谷ロックフェス、80年代のバブル期には大型スポンサーを後ろ盾に大規模な野外フェス、バブル崩壊後には大型野外コンサートは下火になり、90年代後半に欧米の野外ロックフェスの影響を受けて97年のフジ・ロックフェス開催をきっかけにして各地で野外フェスが開催されるようになった。

魂を揺さぶるロックフェス
 日本では現在、50を超える野外音楽フェスが開催されているが、そのうち国内4大ロックフェスは、フジ・ロックフェス(苗場スキー場、約13万人)、サマー・ソニック(東京・大阪会場、約16万人)、ライジング・サン・ロックフェス(石狩湾新港、約6万人)ロック・イン・ジャパンフェス(国営ひたち海浜公園、約17万人)である。
 道内最大の野外フェスは、8月下旬に石狩湾新港で開催されるライジング・サン・ロックフェス(RSR)だ。99年に第1回を開催し、今年8月に第15回を開催。日本のロック、ポップス界から約100組が6つのステージに出演する。
 第1回当時20歳だった若者も今は30歳代半ばになり、リピーターは家庭を持つ年代になっている。RSRは広大な石狩湾新港を会場にしており、参加者の多くは家族連れでキャンプ道具を持参して泊まり込みで生演奏を楽しむことができる。現在の日本では「音楽離れ」が起きているといわれているが、コンサート体験の感動から子どもたちが音楽を聴くようになり、やがて自分たちで演奏するようになる可能性もある。野外フェスは魂を揺さぶる迫力があり、参加者は深い感動を楽しめる。
 RSRの特色は出演者が野外で夜通し演奏を繰り広げた後で、観客と共に日の出の瞬間を迎えることだ。音楽だけでなく、環境がもたらす感動は得難いものがある。北海道は野外フェスのメッカに成り得る可能性がある。