小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
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編集後記

Tom Waits


 1975(昭和50)年、いまから36年前学生だった頃、狭い四畳半のアパートですり切れるほど何度も聞いたレコードがあった。きっかけは関西フォークの旗手大塚まさじが「まだ会わぬ友」という曲でトム・ウエイツのことを歌った曲を聴いたことだ。早速アルバイトで得た銭でレコードを買って聴いた。涙が出た。音楽のみで涙が出たのは初めてだった。英語だから歌詞の意味さえわからずにだ。
 しばらくして当時流行の先端であったパルコがトムの弾き語りのシーンをCMに起用し、流石と感動した。だがメジャーにはならなかった。むしろそれでホッとした。トムの全てのLPを保有し、いつも聴いた。つい最近、山崎豊子原作の『不毛地帯』が唐沢寿明主演のカバードラマのエンディングテーマでトムの「Tom Traubert's Blues」が流れ、密かにヒットしたせいか第一興商のカラオケナンバーにまで加わった。
 ロックを嫌い、ジャズやブルースを愛し、客を笑わせる語りの場末の酒場のショーマンでありながら、なぜこんな優しい曲がつくれるのかと、そのセンスは私にとって神聖な印象として刻まれた。
 彼の曲は確かにジャズっぽいしブルースっぽい、がそうではない。まさにトム・ウエイツのオリジナル、トムズバラードなのだ。

歴史文化研究所
 副代表理事・編集人 石井 伸和